植田真梨恵 - センチメンタルなリズム
- アーティスト: 植田真梨恵
- 出版社/メーカー: TENT HOUSE
- 発売日: 2012/04/18
- メディア: CD
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先に断言します。過去最高傑作です。デビュー作『退屈なコッペリア』をピークに落ちてきたかなー?と思っていたんですが、全然そんなことはなかった。間違いなく過去最高傑作です。では全曲レビューを。
- 全作詞と作曲 植田真梨恵
- 01. センチメンタリズム
シャッフル気味のリズムから始まる緩いギターポップナンバー。かと思いきや1サビで倍テン!激しいギターロックナンバーに変貌!そして大サビでは転調…して最後にはまた元のテンポに戻るという慌ただしい一曲。歌詞は「(JASRACからの申し立てにより削除しました)」と近年のJ-POPシーンへの警鐘と自嘲を織り交ぜたようなもの。
arrange 岡崎健 drums 上田淳介 bass 雲丹亀卓人 guitars 岡崎健 keyboards 愼英順
arrange 岡崎健 drums 車谷啓介 bass 雲丹亀卓人 guitars 岡崎健 keyboards 愼英順
- 03. メリーゴーランド
ピアノのイントロ〜サビからしっとりと始まるピアノロックナンバー。本人曰く「昔からフルアルバムの3曲目って、いちばん良い歌っていうイメージがあって。J-POP に限った話なのですが、小4くらいの時から密かに思っていたんです。持論です。これ、私が思う、今までの私の、いちばん良い歌なんですよ。」。これには共感せざるを得ませんでした。3曲目はほんといい曲が多いんですよね。
arrange 大楠雄蔵 drums 車谷啓介 bass 雲丹亀卓人 guitars 野口亮 keyboards & programming 大楠雄蔵
- 04. シンクロ
こちらもピアノのイントロから始まるミディアムテンポのナンバー。小休止といった感じですかね。アレンジはdoaの徳永暁人氏。勝手な偏見なんですけど徳永さんのアレンジって好みじゃないことが多いんですよね。植田さんはシンガーソングライターなので関係ないんですが、そのせいかいまいちパッとしない曲だなーと思ってしまいました。3曲目までの激しい流れを一旦断ち切る箸休め的な曲で、曲単体としては普通にいい曲なんですが、3曲目までのインパクトが強すぎて印象に残りづらい曲。
- 05. 飛び込め
ベースから始まるタイトなロッカバラードナンバー。植田さん曰く「いつかシングルとして出したっていい」と思っていたというほどの曲で過去の曲でいえば「コンセントカー」のような名曲。これは安心して聴ける曲ですね。
arrange 岡崎健 drums 上田淳介 bass 雲丹亀卓人 guitars 岡崎健
- 06. G
ドラムから始まるギターポップナンバー。これも「飛び込め」が名曲なだけに印象に残りづらい曲になってしまってはいますが、曲単体として聴けば普通にいい曲なはず。植田さん曰く『タイトルの「G」は、“gravity”の「G」』で、「懐かしい雰囲気がレトロでポップな一曲」とのこと。まさしくその通りの曲調だと思います。ラストにサビ前のフレーズを繰り返すのは蛇足だったような気が。
arrange 工藤健太 bass 雲丹亀卓人 guitars & programming 工藤健太
- 07. 愛おしい今日
ピアノから始まるバラードナンバー。この他にもライブ配信で聴いたことのある曲は何曲かあるんですが、これもそのうちの1曲。「飛び込め」に並ぶ名バラード。植田さん曰く『「センチメンタリズム」で歌っているような、植田真梨恵流の“「会いたい」ばっかりのラブソング”』だそうです。いやそれでもこれは名曲ですよ…。大サビでの転調なんて感涙モノです。「過去を手に入れてしまった想いは思い出になるの?って そんな風にしたくない」という歌詞にすごく共感しました。
arrange 大楠雄蔵 drums 車谷啓介 bass 雲丹亀卓人 guitars 野口亮 keyboards & programming 大楠雄蔵
- 08. ミルキー
ボーカルから始まるギターポップナンバー。男性コーラスとしてGARNET CROWのギタリスト岡本仁志氏が参加しています。そうなった経緯に関してはエキサイトミュージックに掲載されている植田真梨恵によるセルフライナーノーツをご参照のこと。これぞ植田真梨恵流のギターポップ、といった感じの曲。BS-11「女傑の導き」エンディングテーマというタイアップもついていました。
arrange 岡崎健 drums 鶴屋裕一 bass 雲丹亀卓人 guitars 岡崎健 organ ショパン・ザ・ベートーベン male chorus 岡本仁志
- 09. 旋回呪文
GARNET CROWの古井弘人氏がアレンジするということでどんな曲なのかと思いきやエレクトロなアレンジが印象的な四つ打ちナンバー。…これはいい…!早口で畳み掛けるAメロから「あうあうあーあーあー」というサビに繋がるという展開は最高にトリップできます。上に書いたセルフライナーノーツでも本人が語っている通り、サビ終わりの「ヤー!!!」は福岡県独特の方言であり、「気をつけ」とか「前ならえ」とか言われたら「ヤー!」と掛け声をあげるのがお決まりなんですね。植田さんは自分の在住地出身なんですが、そこら辺やっぱり親近感が湧きます。
- 10. まわる日々
またもやアレンジャー批判になってしまうんですが、Bonn氏のアレンジもあまり好きじゃないんですよね…。ってことでこの曲もいまいちパッとしない曲だなーと思ってしまいました。いやシンガーソングライターなのでアレンジャー関係ないんですけどね…。本人も語っているように「このアルバムの中でもっともストレートでシンプルなギターロック」だと思います。大サビでボーカルをぐるぐると回転させるミックスは面白いと思いました。
arrange Bonn drums 上田淳介 bass 雲丹亀卓人 guitars Bonn
- 11. 優しい悪魔
ピアノから始まるストリングスが印象的なバラードナンバー。植田さん曰く、つまりは死にたいと思ったことが何度もあるそうで。「これまでの私の歌で、いちばん暗いトーンで描いた曲」だそうです。「同じような思いを抱えている人に、聴いてほしい」そうですが、個人的にはあまりピンと来なかったなー…メッセージ性の強い曲だというのは伝わりましたが。
arrange 岡崎健 drums 鶴屋裕一 bass 雲丹亀卓人 guitars & programming 岡崎健 piano 愼英順
- 12. よるのさんぽ
この曲のみピアノとアコギの一本録りになっています。そのためアレンジもピアニストの西村広文氏と共同名義に。間奏などで出てくる音色はカズーという楽器だそうで植田さんが演奏されています。またこの曲はFM802「NIGHT RAMBLER」のジングルとして使用されているそうです。「よるのさんぽ」という雰囲気は伝わってくるのですが、曲自体はパッとしないかなーと。M-10〜12は個人的に中だるみしてしまいます。
- 13. 変革の気、蜂蜜の夕陽
ボーカルから始まる優しいピアノの音色が印象的なポップナンバー。ギタリストとしてGARNET CROWの岡本仁志氏が参加しています。アレンジャーのneutrinos氏とは一体どなただろう…?と思っていましたが、植田さん曰く「もともと友人でもあるneutrinosの二人」らしく、ユニットだったようです。電子音が散りばめられていてなんとも言えない不思議な世界観の楽曲に仕上がっています。
arrange neutrinos drums 車谷啓介 bass 雲丹亀卓人 guitars 岡本仁志 programming neutrinos
という全13曲でしたが、実にバランスのとれたアルバムだと思います。前作から約1年10ヶ月ぶりということもあり、とても濃いアルバムになっていて、植田さん曰く「じつは、このアルバムに収録された曲たちは大体、その“良い曲”に当てはまるものばかりを選出しています。」とのことで、まさしくその通りのアルバムだと思います。アルバム発売告知の際の画像に「17〜21才の私の随所が、随所に散りばめられています。聴いてくださった方をぐったりに疲れさせてしまうかもしれません。そんな気もしています。たくさんお待たせした分、濃いものが出来上がってしまいました。大袈裟でなく、これが私の生命力です。」とのメッセージがありましたが、実は正直最初に爆音で聴いた時、聴いていて「疲れるなー」と思ってしまった自分がいます(2度目に小さめの音量で聴いたらそうでもなかったんですけどね)。なので初心者の方にはおすすめできないかもしれないです。フルアルバムですからね。まずは1stミニアルバム『退屈なコッペリア』を聴いていただいて、それから2ndミニアルバム『U.M.E.』、3rdミニアルバム『葬るリキッドルーム』、そして4thアルバム『センチメンタルなリズム』…と聴いていくのがベストかと思います。何度か植田真梨恵ももう終わりかなーと思いかけてしまいましたが、まだこんないい曲だらけのアルバムを出せるんだ!と思うと嬉しくなりました。インディーズラストの作品とのことで、次のメジャーデビュー作が楽しみです。