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モーモールルギャバン 『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』 (2012年)

僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ

僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ

[総評] モーモールルギャバン(以下、モーモー)は2005年4月に京都で結成されたバンド。ドラムボーカル、ベース、キーボードという変則的なメンバー構成による3人組。2009年11月に1stアルバム『野口、久津川で爆死』でデビューし、以後、計4枚のアルバムと計2枚のシングル(1枚はシングルCD付きDVD)をリリース。今回はアルバムとしては最新作となる4thアルバム『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』をレビューします。モーモーはとにかくライブが全力というか、ドラムボーカルの“ゲイリー・ビッチェ”(以下、ゲイリー)がパンツ一丁で汗だくになりながら(来年から始まる全国ツアーのタイトルにもなっているように)「乱れうち」なパフォーマンスを見せるし、代表曲「ユキちゃん」では「ユキちゃん愛してる」だとか「サイケな恋人」では観客とのコール&レスポンスとして「パンティー」コールを巻き起こすだとか、そういった言葉は悪くなりますが「色モノ」的な見方をされがちなバンドだと思うんですが、実際ちゃんと曲を聴いてみるとすごくメロディセンスが光っている曲が多いですし、何よりキーボードの”ユコ・カティ”が奏でる音色がとてもメロディアス。歌詞に抵抗を示す人は多いでしょうけど(パンティーパンティー言ってるし)、曲はポップネスで(本人たちも自称しているように)どこまでもJ-POPなんですよね。それを踏まえて評価されるべきバンドだと思うんですが、今回はどこまでも真面目。今までのアルバムでは必ず一曲は「パンティー」と歌ってる曲があったのに今回はそれが一曲もない。それを残念がるファンも少なからずいたようですが、本人たちが語るには2011年は震災もあり、色々と考えさせられる一年だったようで(3rdアルバム『BeVeci Calopueno』のリリースは震災直後の2011年3月16日でした)、自分たちが何をすべきなのか、といった所から制作が始まったアルバムだったようです。ゲイリーはそれまで「ロック」というものに負い目を感じていたようで、あえて奇をてらった事をしていたそうで。でも今回はそれに真っ向から取り組もうとした結果、このアルバムができたらしく。また、アルバムタイトルに「若さを叫ぶ」とあるように、メンバーの年齢も30歳を過ぎ、「まだ初期衝動が残っている今のうちに直球勝負の音楽をやっておこう」という思いがあり、制作されたようです。そんな4枚目かつ最新作にしてモーモー史上、最も音楽に真摯に向き合って作られたアルバムが今作。個人的にはタワレコの試聴機で何気な~く、ほんとに「名前だけ聞いたことあるけどどんなバンドなんだろう」くらいの気持ちでこのアルバムを試聴してみたら1曲目の「スシェンコ・トロブリスキー」から完全にKO。そんなパワーを持つアルバム。全曲捨て曲なしと言っても過言ではない出来。どの曲にもそれぞれの魅力があってメロディが光ってるんですよね。だから浮いている曲もないし、どの曲も欠けてはならない存在になっているという。あえて難点を挙げるとすれば、ライブでの定番曲が冒頭2曲(「スシェンコ・トロブリスキー」「サノバ・ビッチェ」)に入っていて、後半はバラードが多くなって尻すぼみ感が否めないので、後半にもう一山あると良かったかなと思います。ただ、アルバムの最後を飾る「気まぐれのように揺れる世界から」はモーモー史上最長の8分15秒にも及ぶ大曲で、「ロックに真っ向から向き合った」このアルバムの最後には相応しい一曲となっています。このアルバムから早1年8ヶ月。その間、シングル「LoVe SHouT!」のリリースのみに留まっているモーモーですが、来年1月からデビュー5周年を記念した全国22ヶ所を廻るツアーが決定しているだけあって、5thアルバムのリリースに期待がかかります。 ★★★★★★★✩ 7.5

01. スシェンコ・トロブリスキー
★★★★★★★★★ 9

02. サノバ・ビッチェ
★★★★★★★★✩ 8.5

03. MY SHELLY
★★★★★★★★✩ 8.5

04. 僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
★★★★★★★✩ 7.5

05. いつか君に殺されても
★★★★★★★ 7

06. 午前二時
★★★★★★★✩ 7.5

07. J・O・E
★★★★★★★ 7

08. それは悲しい唄のように
★★★★★★★★ 8

09. 彼と彼女の日常
★★★★★★★✩ 7.5

10. 気まぐれのように揺れる世界から
★★★★★★★✩ 7.5