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Perfume 全作品紹介【その3・2008~2009『⊿』】

第3弾は2008年「love the world」から2009年『⊿』までを紹介していきます。
曲名横の数字は全楽曲リストとしてナンバリングしたものです。通算何曲目の楽曲か、というのを分かりやすくしたつもり。
また、アルバム未収録曲には★印をつけていますので、全楽曲をコンプリートしたい方はそちらを参考にしてください。
(こちらもどうぞ → Perfume 全楽曲リスト - ryo*k901
(その2はこちら → Perfume 全作品紹介【その2・2007~2008『GAME』】 - ryo*k901
(その4はこちら → Perfume 全作品紹介【その4・2010~2011『JPN』】 - ryo*k901

 

2008年

love the world(通常盤)7thシングルlove the world
2008年7月9日発売

  1. love the world [030]
  2. edge [031]
  3. love the world -original instrumental-
  4. edge -extended mix-

【収録アルバム】
love the world/edge (⊿-mix):⊿/Perfume Global Compilation "LOVE THE WORLD"/Perfume The Best "P Cubed"

前作「Baby cruising Love / マカロニ」から6ヶ月ぶり、『GAME』から3ヶ月ぶりの7thシングル。
love the world」は発売当時あ~ちゃんが「右から左~な感じの曲です」と冗談っぽく言っていましたが、確かに一度聴いただけではそうなってしまいかねないほど聴き心地の良い楽曲になってはいるものの、実はこの曲とんでもない曲だと勝手に思ってます。聴けば聴くほど、といいますか。こんな複雑怪奇な曲、そうそうないぞ?!と思うほど。是非インストゥルメンタルで聴いてほしいのですが、ボーカルありだと聴こえなかった細かい音色がぎっしり詰まっていて、作り込みの細かさに驚かされます。Cメロ「Have a nice day」からの展開が本当に素晴らしい。微妙に全部のサビでメロディを変えているところも芸が細かいというかなんというか…変態性の高いポップス!ライブで盛り上がりにくいというか盛り上がっているのを伝えづらい曲wなので、あまり披露されなくなってしまいましたが…どんどんやってほしい…。
c/w「edge」は当時発売直前に音源が流出したのを聴いた自分が「え、これ大丈夫なの?」と本気で心配したぐらい攻撃的かつ挑戦的な楽曲。けどKOSEのCMソング(上戸彩出演)に採用されちゃったぐらいだから、当時のPerfumeの勢いがとんでもなかったということが分かります…。「だんだん気になる好きになる気になる」のフレーズが催眠のように繰り返されたり、「誰だっていつかは/死んでしまうでしょ/だったらその前にわたしの/一番硬くてとがった部分を/ぶつけて see new world(死ぬわ)」といったダークすぎる歌詞が印象的。ライブでは2008年の「BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!」や、2009年の「ディスコ!ディスコ!ディスコ!」などで披露される度にグレードアップされ、2009年7月にリリースされた3rdアルバム『⊿』では「⊿-mix」として収録。オリジナルバージョンと4曲目のextended mixはアルバム未収録となっており、このシングルでしか聴けません。人によってはこの通称無印バージョンやextended mixが一番シンプルでいいという人もいるので聴き比べてみるのもいいかもしれません。リアルタイムで楽曲が進化していくのを体感してきた自分としてはやっぱり「⊿-mix」が最終完成形といった印象がありますが。ちなみにPerfumeの楽曲がextended mixとして収録されているのは2020年現在この「edge」だけ。他のシングルは毎回「Original Instrumental」しか収録されていません。*1

(画像をクリックorタップで「love the world」のMVが視聴できます)

 

Dream Fighter8thシングルDream Fighter
2008年11月19日発売

  1. Dream Fighter [032]
  2. 願い [033]
  3. Dream Fighter -Original Instrumental-
  4. 願い -Original Instrumental-

【収録アルバム】
Dream Fighter:⊿/Perfume Global Compilation "LOVE THE WORLD"/Perfume The Best "P Cubed"
・願い (Album-mix):⊿

前作「love the world」から4ヶ月ぶりの8thシングル。
Dream Fighter」は、発売直前の11月6日・7日に自身初となる日本武道館公演2daysを開催した際に初披露された楽曲。その後の「夢追い人」というPerfumeのイメージを決定づけたある意味、呪縛のような楽曲w ヤスタカがこんなにストレートなメッセージ性の強い楽曲を書くとは…と発売当時も思いましたし、今聴いても驚かされます。ヤスタカは「なんかいい人みたいになっちゃうから本当はすぐ『嘘でした!』って曲を出したかった…」的なことを当時語っていましたが…きっと照れ隠しだったのでしょう。個人的にはあまりにもストレートすぎて聴いていて苦しくなってしまうのでそこまで好きな楽曲ではないです…。ひねくれててすみません。当時のヤスタカが多用していた歪ませまくったシンセベースが個人的には唯一の聴きどころ。ライブでは正直もうお腹いっぱい。メンバー曰く「からし色」の衣装が映える全面黒背景で踊るだけのシンプルなMVはカッコいい。
c/wの「願い」は、当時最遅BPMだった「マカロニ」をさらに更新し、BPM80のピアノバラード。合唱曲としても使えそうなほどシンプルなメロディに乗せて歌われる、当時の3人の心情を思わせる歌詞が響く一曲。2009年7月に発売された3rdアルバム『⊿』には元々収録予定ではなかったものの、同年5月に行われたライブ「ディスコ!ディスコ!ディスコ!」で披露されたのを見たヤスタカが感動のあまり締切間近にも関わらず急いでAlbum-mixとしてアレンジし、収録までこじつけたという逸話も。そういう経緯もあってオリジナルバージョンはアルバム未収録。Album-mixではカットされたピアノソロの後奏が感動的。「Dream Fighter」も「願い」も当時はストレートすぎていまいち好きになれなかったけど「願い」は今聴くと結構いいなぁ。

(画像をクリックorタップで「Dream Fighter」のMVが視聴できます)

 

2009年

ワンルーム・ディスコ(通常盤)9thシングルワンルーム・ディスコ
2009年3月25日発売

  1. ワンルーム・ディスコ [034]
  2. 23:30 [035]
  3. ワンルーム・ディスコ -Original Instrumental-
  4. 23:30 -Original Instrumental-

【収録アルバム】
ワンルーム・ディスコ:⊿/Perfume The Best "P Cubed"

前作「Dream Fighter」から4ヶ月ぶりの9thシングル。
ワンルーム・ディスコ」はイントロからいきなり激しい電子音から始まったかと思いきや、一転かわいらしいポップスに変貌するディスコナンバー。ヤスタカの天邪鬼さが垣間見えます…。「なんだって すくなめ/半分の生活」という歌詞からも分かるように、リリース時期に合わせた新生活ソングにもなっています。一部ファンの間では同棲解消or離婚した女性の歌詞…という説も囁かれていますが、さすがに深読みしすぎだと思う派。この曲、ほんと好きなんですよね。MVも関和亮氏らしい遊び心に溢れた演出と仕掛けが満載で、踊りまくる3人の姿は新生活に不安と期待を抱く若者そのものというか。自然と曲までどこか切なげに聴こえてくるという。リリース当時、3人も「踊れるのに泣ける曲」と言っていましたからね。あとこの曲、構成が面白くて序盤の「ディスコ♪ディスコ♪ワンルーム・ディスコ♪」の部分と、「新しい場所で うまくやっていけるかな」で2種類サビがあるんですよね。ライブでもイントロで一気に盛り上がるので頻繁に披露されてます。Perfumeの中でも特に好きな一曲。
「23:30」は数あるアルバム未収録のc/w曲の中でも一番レアキャラ扱いされている楽曲。それもそのはず、発売から10年以上経った今でもライブで一度も披露されたことがないのです…。ウッドベースの音色が心地よいジャズテイストのスローナンバーなんですが、確かにこれはライブではやりづらいわなぁ…。ただPerfumeの3人も30代を迎えたことなので、そろそろこの曲をやっても違和感はないような気がします。それまで同じくライブ未披露だった「Butterfly」も初披露された「Reframe」だったら結構やれそう。ライブでは未披露ですが、2010年に発売されたライブDVD「直角二等辺三角形TOUR」のエンドロールで使われていたので、その印象が強い一曲ですね。終盤から入ってくるピロピロ鳴ってる音色がいいアクセントになってて良い。当時は4ヶ月後にリリースされるアルバム『⊿』の中の「Kiss and Music」もそうでしたが、大人びた楽曲がやたらと多かったイメージがあります。

(画像をクリックorタップで「ワンルーム・ディスコ」のMVが視聴できます)

 

トライアングル(通常盤)3rdアルバム「⊿」
2009年7月8日発売

  1. Take off [036]
  2. love the world
  3. Dream Fighter
  4. edge (⊿-mix)
  5. NIGHT FLIGHT [037]
  6. Kiss and Music [038]
  7. Zero Gravity [039]
  8. I still love U [040]
  9. The best thing [041]
  10. Speed of Sound [042]
  11. ワンルーム・ディスコ
  12. 願い (Album-mix)

【収録アルバム】
・edge (⊿-mix)/NIGHT FLIGHT:Perfume Global Compilation "LOVE THE WORLD"/Perfume The Best "P Cubed"
・I still love U:Perfume The Best "P Cubed"

前作『GAME』から1年3ヶ月ぶりの3rdアルバム。タイトルは「トライアングル」と読みます。3rdアルバムであることや、3人組であることにちなんで、ラテン語で「3」を表す「トライ」が由来となっているそう。△ではなく⊿なのは、Perfumeにはリーダーやセンターという概念がないので、三角形の頂点が真上を向く形を避けたため。当時タイトルが発表された際は「こ、これは…!」とかなり衝撃を受けたのを覚えてます。まさかの記号ですからね…。

「Take off」はこのアルバムから恒例となった1分前後のオーバーチュア*2。3人の肉声によるカウントダウンに「ランランラララン♪ラララララン♪」というハミングが乗る、否応なしに期待を煽られる1曲。…そこから間髪入れず「love the world」に入るという構成。自分だったら「ワンルーム・ディスコ」に繋げてガン上がりな構成にするところをあえて「love the world」を配置するのはやっぱり天邪鬼だなぁと思ってしまいますw 綺麗に繋がっていますし、「love the world」は大好きな曲なのですが、どうしても「Take off」の後だとズコーッ!ってなってしまいます、当時からずっと。ライブでは長さを引き伸ばしてそこから「NIGHT FLIGHT」に繋げていましたが、あのバージョンの「Take off」いつか音源化してほしいです。

love the world」「Dream Fighter」という既発曲を挟んで、次は「love the world」のc/w「edge」のアルバムバージョン「edge (⊿-mix)」です。元々6分半あった楽曲を更に引き伸ばしているので8分40秒を超える大作になっています。テクノなど電子音楽に馴染みのある人にとっては特に苦痛ではない長さでしょうが、普段3~4分の楽曲がほとんどのJ-POPしか聴いていないリスナーにとってはここがある意味、最大の難関なのでは。実際そういう意見も数多く見てきました…。武道館や代々木などで楽曲が文字通り育っていくのをリアルタイムで追ってきた人間としてはこれが最終形。違和感も抵抗もなく聴くことができます。ただライブで披露される際、いつも最後のサビなどが若干カットされているのがちょっと残念。体力的な問題なのか演出上の問題なのか。曲に関して言えばここまで育ち上がってしまうと、音源だけで聴くよりもライブで演出や振り付けも合わせて見るべきとしか言いようがないですね。Perfumeの楽曲は基本的に全部そうなんですが、この曲は特に。

「NIGHT FLIGHT」は、前作『GAME』収録「シークレットシークレット」以来、2度目となるエスキモー「pino」CMソング。CMとリンクしたMVでキャビンアテンダントに扮した3人が登場していましたが、楽曲もタイトル通り飛行機ソング。振り付けも機内食を提供したり、両手を前に組んで3人で足並み揃えて歩いたり、キャビンアテンダント~!なイメージをこれでもかというほど盛り込んであって見ていて特に面白い一曲。曲のほうはイントロから完全にテクノポリスですか、ってぐらいYMO。キラキラした音色と、とにかくブリブリ動き回るベースラインの対比が最高。この時期のヤスタカはこのベース音をよく多用していた気がします。「ワンルーム・ディスコ」とかもそうでしたけど。間奏明けのフィルターからのカットアップ、ほんと最高です。アウトロでずたずたにカットアップされた3人の声は今あらためて聴いても鳥肌モノ。

「Kiss and Music」は前曲とは打って変わって極めてシンプルな音作りのR&Bテイストの楽曲。これは当時も困惑しましたし、今聴いても背伸びしてるなぁ~という印象が拭えません。ライブでは帽子を使ったダンスを披露していました。マイケルリスペクトっぽい振り付けは後にも先にもこの曲だけ。2分36秒という長さは当時では最短でした。*3

「Zero Gravity」は波の音から始まる、軽快なリズムとエレピの音色が心地よい楽曲。ライブではサイコロ状の四角形の物体?笑を使ったダンスを披露していました。腰掛けたり乗っかったり。ラウンジポップ時代のcapsuleに近いというか、「Ocean Blue Sky Orange」とかああいう曲にも通じるような雰囲気。ライブでの振り付けが可愛らしいのでその印象が強いですが、曲だけ聴くとなんとも掴み所のない楽曲という印象…。

「I still love U」はMVも作られた今作のリード曲。なんというか…初めて聴いた時からどこか懐かしいような感じがするというか、これ完全に90年代のJ-POPですよね。Perfumeの全楽曲中でも特にエフェクトが強くかかったボーカルのせいか小松未歩が歌っても違和感のないようなメロディ。一般的にはバナナラマの「Love In the First Degree」とかあの辺をイメージするんでしょうけど。イントロのやたらと攻撃的なサウンドとこのベタなJ-POPっぽさのミスマッチ感が実は結構ツボだったり。MVは白い背景に真っ白の衣装を着た3人がカメラを見つめながら歌う…だけで終わるはずがなく中盤から何故か微妙な表情を見せたり、笑い始める3人。既に「ネタばらしVersion」も公開されているので言ってしまうと、これは足つぼマッサージを受けながら撮影されているから。冷静に考えるとすごい変態チックなMVですよね…。

「The best thing」は今作における新曲群の中でも一番従来のPerfume像に近い楽曲。サウンドやメロディがもうこれぞPerfume、ってぐらいオーソドックス。にも関わらず当時のツアー「直角二等辺三角形TOUR」では唯一披露されなかったんですよね…。翌年のファンクラブ会員限定ツアーでようやく披露されるも、更に翌年行われた初の東京ドーム公演で久々に披露されるも本編とは別の「P.T.A.のコーナー」という観客とのコールアンドレスポンスなどを楽しむコーナーでサビのみ披露…というような不遇すぎる扱いも相まってか、2018年の2度目のファンクラブ会員限定ツアーでのファン投票で見事1位を獲得し、久々に披露されました。ファン人気の高い隠れた名曲といったところ。

「Speed of Sound」は前曲から間髪入れず始まるインタールード的な楽曲。4分近くあるので実際にはインタールードとは言えないのですが…。この曲は完全に中田ヤスタカ meets Perfumeでしかなく、3人は「starting」「point」「engine」「landing」など、飛行機っぽい英単語の羅列を読み上げているだけ。このアルバムの裏テーマは飛行機なのか、と今更ながら思ったり。1曲目も「Take off」だし、「NIGHT FLIGHT」とかモロ飛行機な曲もあるし。この頃から海外進出も視野に入れていたんだろうなあ。多分。曲に関してはライブでも着替え曲として使用されていただけあって、特筆すべきことは特に…。けどこの流れで聴く「ワンルーム・ディスコ」は流れにうまくハマっている…気がする。

「願い (Album-mix)」は「Dream Fighter」c/wのアルバムバージョン。前述の通り、発売2ヶ月前に行われたライブの最後に披露されたのを見たヤスタカが感動のあまり急いで制作して収録にこじつけた楽曲です。原曲は割とシンプルなアレンジでしたが、ストリングスなどが追加されたこともあり、とにかく感動的なアレンジに生まれ変わっています。個人的には原曲のほうが好み、かな…。「ワンルーム・ディスコ」の曲終わりの余韻がやたらと長いのに対し、この曲はスパッと途切れるように終わるのが当時からずっと不自然というか、もう少し余韻あったほうがよかったんじゃ?と思ってしまう。

前年『GAME』をリリースし、大ブレイクを果たし、初の武道館公演も成功させ、2009年に入って「ワンルーム・ディスコ」をリリース後、初の代々木第一体育館でのライブも成功…とトントン拍子に見えていましたが、代々木ライブであ~ちゃんは「テレビやラジオの仕事が増えていってだんだん誰に向けてやっとるのか分からんくなる…」「見捨てんでね!」というような心境を吐露していました。順調に見えていながらも、ブレイクを経てあまりにも急激に変化していく環境についていけなくなっていたのかもしれません。そしてこのアルバムの発売直前にかしゆかとのっちのスキャンダルがフライデーで報じられる(通称:金曜事変)といったこともあり、発売日前日のラジオの生放送であ~ちゃんが突然泣き出す…など、今思い返しても2009年のPerfumeはどこか暗いイメージがあるというか、辛そうな雰囲気があったように思います。それはこのアルバムにも表れていて、前作『GAME』のインパクトが強かったことや完成度があまりにも高すぎたのもあり、それに比べると若干クオリティは落ちるかな…というのが正直なところ。ただここで『続・GAME』のようなテイストのアルバムを出していたら一過性のもので飽きられていたような気もしますし、その辺のバランス感覚はやはりさすがヤスタカと言わざるを得ません。個人的に評価の高いアルバムではありませんが、今振り返っても過渡期における一枚、という印象の強いアルバムです。

(画像をクリックorタップで「I still love U」のMVが視聴できます)

*1:例外として、2018年発売のシングル「無限未来」c/w「FUSION」は唯一「Original Instrumental」が収録されませんでした

*2:例外として2013年発売の5thアルバム『LEVEL3』のみオーバーチュアではあるものの長さが3分半ほどある「Enter the Sphere」が収録

*3:2011年発売の4thアルバム『JPN』収録「時の針」が2分30秒で更新